低ドロップアウト(LDO)という電圧レギュレータ
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インドで国際自動車ショー「オートエキスポ」が2020年2月上旬に、ニューデリー近郊でありました。
この中でも注目されたのが、多目的スポーツ車(SUV)ながら実質100万円台前半で購入できる電気自動車(EV)を発表した地場大手メーカーだ。
大気汚染の改善に向けて4月、欧州並みに厳しい排ガス規制が導入されるため、電動車の出展が相次いだ。インド発のEV自動車低価格化の波が広がる可能性もある。
以上、写真と紹介記事(一部)は日本経済新聞から引用しました。
このような進化を続ける、新しい時代に向けて、そこに使用される様々な電子パーツも新しいユニークなものが発売されています。
今回は、あらゆる電子制御装置(コントローラー)に必ず採用される定電圧レギュレータの中から、ユニークな【低ドロップアウト(LDO)レギュレータ】を紹介したいと思います。
【低ドロップアウト(LDO)レギュレータ】
入力電圧や出力負荷電流が変化しても常に一定の電圧を出力するための電子部品に定電圧レギュレータがあります。
低ドロップアウト(LDO)レギュレータは、ロー・ドロップアウト・レギュレータとか、LDO電圧レギュレータとも呼ばれます。また、低損失型リニアレギュレータとか、低飽和型リニアレギュレータと呼ばれる場合もあります。
これらの別の呼び方からも、それがどういうものなのか、その意味が伝わってきますが、低ドロップアウト(LDO : Low Drop out)タイプというのは、標準型のレギュレータでは動作させることが困難な、1V以下程度の低い入出力電位差で動作するので、低損失型とか、低飽和型呼ばれる訳です。
左の回路画像は、LDOレギュレータの著名なメーカーである「ローム」さんからお借りしました。
標準的な定電圧レギュレータは、入力電圧(Vin)から一定の電圧を下げて、例えば入力の12Vから7Vの電圧を下げて、5Vといったデジタル回路用の出力電圧(Vo)を作り出します。
このため、高い消費電力(=7V x 負荷電流)が発生するため、このパーツが熱源となり、電子制御装置自体の温度が高くなってしまいます。
このパーツをたくさん使うと、温度が高くなるため、冷却するためのヒートシンクやファンなども必要になってきます。結果的に信頼性なども落ちてしまうことになります。
ここに紹介の低ドロップアウト(LDO)レギュレータは、低損失型とか、低飽和型とか言われるように、出力段のトランジスタに飽和電圧の低いタイプ(1V以下の低い入出力電位差)を採用しているので、消費電力が非常に少なくなります。
従って、発熱が少なくなり、冷却するためのヒートシンクやファンなども不要になり、信頼性が高まるだけでなく、電子制御装置全体の価格も安く抑えられることになります。
例えば、3.3V電源を必要とする場合、標準レギュレータでは、デジタル電源の、5Vから3.3V電源を作ることができないため、低ドロップアウト(LDO)レギュレータが必要となります。
ガソリン自動車のバッテリー電圧は、定格12V(14ボルトから10ボルト)くらいですが、現在の電気自動車(EV)のバッテリーは、ほとんどがリチウムイオン電池となります。
リチウムイオン電池の単電圧は、3.7V-3.8Vが主流のようで、4.2V(完全充電)から3.0V(放電)と言われています。
このため、電気自動車(EV)のバッテリー用途に必要な電圧300Vから400Vまでを作り出すには、多数(約108個)を直列に繋いで構成しているようです。
高電圧にするのは、高い動力(電圧×電流)を稼ぐために、低電流動作にするとのことです。低電流で配線を細くすることができるため、コストや信頼性面でのメリットがあるようです。
【あらゆる携帯機器に搭載】
リチウム・イオン電池は、吉野彰さんが、2019年ノーベル化学賞を受賞したことでも、日本のすぐれた技術として一躍有名になりました。
リチウム・イオン電池は、自動車向け以外に、従来から、あらゆる携帯機器に搭載されていて、そのため、あらゆる携帯機器に、LDOレギュレータは使われています。
ノートPC、ディジタル・カメラ、PDA、ワン セグTV、電子辞書、ハンディ・ターミナルなど、ほとんどの機器に無線・有線インターフェース機能、表示機能、記憶装置、オーディオ機能、充電機能が搭載 されており、軽量で電流容量が大きく劣化の少ないリ チウムイオン電池でそれぞれの電子回路を動作 させる構成が主流となっています。
さて例えば、何らかの理由(一般自動車で言えば始動時下がる)で、リチウムイオン電池の単電圧が、フル充電の4.2Vから3.0V(30%ダウン)に下がっても、
この時に、2.8Vの低ドロップアウト(LDO)レギュレータが採用されていれば、負荷への供給電圧は一定の2.8Vに維持されます。(3.0Vから0.2Vしかドロップしない設計なので正常動作する)
このように、低電圧動作の携帯機器には、必須の電子パーツということです。
【LDOレギュレータの種類】
LDOレギュレータの種類は、実に豊富で、固定電圧出力のものから、出力電圧可変タイプまで数え切れないほど販売されています。マイナス電圧出力もあります。
出力電圧可変タイプは、-1.25V から 5.5 Vなどと、1つのパーツでその出力を切り変えられるタイプのものです。
一般の電子回路の電源電圧は、デジタル回路で見ると、TTLやCMOSなどで、5Vが一般的でしたが、現在では、5V、 3.3V、 1.5V、0.8Vまで、0.1V刻みでほぼもれなく存在はするようです。
メーカーもそれに合わせて汎用品として実に豊富な種類が用意されています。
携帯機器設計向けの代表的な電源には、メモリー用1.8V、モデム用やBluetooth用2.8V、USB用の3.3V、コアCPU用途1.5V、アナログ用2.75Vなどがあるようです。
また、これを製造するメーカーも非常にたくさんあります。
ローム、東芝、新日本無線、シャープ、アナログデバイス、テキサスインストルメンツ、ON Semiconductor 、STMicroelectronics、Microchip、Holtek 、DiodesZetex 、Maxim Integrated 、Infineon 、・・・・・・・・などなどです。
RSコンポーネンツに代表される電子パーツ専門サイトなどで低ドロップアウト(LDO)レギュレータを購入する際は、出力電圧可変タイプなのか、固定タイプがいいのか、最適な電圧のタイプなど必要な設計条件を、あらかじめシステム全体で考慮して決めるといいでしょう。
低ドロップアウト電圧レギュレータについて詳細はこちらから、お読みください。
(2020年2月11日 記)