NVIDIA「SLI技術」の要点と派生技術
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(本カテゴリーは、専門技術用語を「初心者の方が、少しでも解りやすくなるように解説」することを主旨に書いています。)
SLI(Scalable Link Interface)は、2枚のグラフィックカードに、フレーム描画の負荷を分担させる技術である。その目的は、同一モデルのグラフィックスカードを2枚同時に利用することで、3D描画性能を理論値で2倍に高めることにありました。
具体的には、2個のGPUを同時に動作させて描画の並列化を実現し、並列化がうまく働けば働くほど性能は向上するという仕組みです。
マザーボード上の2個のPCI-Express スロットに、同じグラフィックスチップの2枚のカード(理想的には全く同一カード)を取り付け、マスタースレーブ構成(※)で(自動)セットとします。
(※注記:マスタースレーブ構成:どちらかがマスターとなり、他方が従属的な役割となるデータコミュニケーション方式を指す。
NVIDIA社のSLIは、構成する2枚のカードが同列であるのに対して、AMDクロスファイア(Cross Fire)の方式は、マスターカード(CrossFire Edition)とスレーブカードの2種類が必要な時代(2007年まで)もあった。本ページは、NVIDIA社の方の「SLIの解説」です。)
2枚のカードは、3Dシーン描画の同じ部分を担当するが、その仕事の半分はスレーブ役となったカードに、「SLIブリッジ」と呼ぶコネクター(写真例の青い部分)を通して、効果的にデータ転送される。
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例えば、マスターが1シーンの上半分を、スレーブが下半分を描画と言った具合(SFR方式の場合)である。スレーブは仕事が終わったら、マスターに信号を送り、マスタは2画像を1つに合成して、モニターに出力する。
SLIブリッジは、帯域幅の制約を減らすのに使われている。このおかげでPCI-Express スロットを介さずに、データ転送は、2枚のカード間で直送できている。
このSLIブリッジコネクタは、GPU間の独自のリンクで「シンクロナイゼーション、ディスプレイ、およびピクセルデータ」を送信します。このため、2つのGPU間の通信は最高で秒速1GB速くなるとも言われています。(NVIDIA社)
【SLI技術の利用の仕方】
SLI技術の利用方式は、下記の2つのレンダリング方式とアンチエイリアスに分類されているが、それぞれ長所や短所がある。
【SFR方式】:(Split Frame Rendering)分割フレーム描画方式
描画画面を2つのGPU間で、50:50の負荷の仕事なるように、最初によく分析する。この結果を使って、フレームは、画面の幾何学的模様に応じて、常に変化する比率で、上下の2画面に水平(あるいは左右)分割されて描画される。
(通常2つのカードの描画開始点は、それぞれ上と下、又は左と右と思われ、ぶつかったところで終了となる。)
例えば、そのフレームの上半分がほとんどなにもない空だとすると、分割ラインは下の方に下がり、バランスよく2つのGPUに仕事を分担させることが出来ることになる。
その仕組み上、頂点パイプライン(Vertex Pipeline:DirectXの上流の処理の1つ)は、2個のGPUがまったく同じものを同じタイミングで処理することになるため、ピクセルパイプライン(Pixel Pipeline:DirectXの下流の処理の1つ)の高速化しか見込めず、最大パフォーマンスは下記するAFRに及ばない。
しかし、SFRは下記のAFRと比べて、より確実性の高いパフォーマンスアップが見込めるというメリットがある。
【AFR方式】:(Alternate Frame Rendering)交互フレーム描画方式
1つ目のGPUカードは、偶数番のフレームを、2つ目のGPUカードは奇数番のフレームをと、それぞれ交互に次々にフレーム描画していく。
AFRでは、1つ目の偶数番担当GPUが、(例えば)20番目フレームをレンダリング中であっても、次の(21番目)フレームのレンダリング準備が完了できれば、(19番目が終わった)2つ目の奇数番担当のGPUは、1つ目のGPUの(20番目)レンダリングの完了を待たずに、次フレーム(21番目)のレンダリングに取りかかれる。
つまり、処理時間がオーバーラップ出来た分だけ、高速化に貢献できるということになる。(DirectX 処理工程での)頂点パイプライン、ピクセルパイプライン処理が、いずれも完全な並列動作を行えることになり、いわゆる理想的な並列動作になるので、もっとも高いパフォーマンスが得られるモードとなる。
NVIDIA 社は、これにより、1枚のGPUカードの1.9倍のパフォーマンスが得られると言っている。AFRは分割フレーム方式(SFR)より高いフレームレートを生み出している。
しかし、各フレームのレンダリング時に使用したテクスチャなどが次フレームと相関関係にあった場合は、整合性処理を追加しなければならず、この処理系の頻度や所要時間が遅延を生み、並列動作の足を引っ張ることにもなる。
【SLIビジュアルインジケータで、SFR方式、AFR方式どちらでアプリケーションが動作しているのか判る】:
←SFR(Split Frame Rendering)方式の写真
Nvidia社の解説ページによれば、「NVIDIAコントロールパネル」の「SLIビジュアルインジケータ」を有効にすると、GPU間で描画負荷がどのように分散しているかという情報が表示されるという。
これは、画面上に水平または垂直の緑色の線が現れるようです。
システムにSLIの名称、2way SLIは「SLI」、3way NDIVIA SLIは「SLIx3」、Quad SLIは「Quad SLI」という文字が重ねて表示されます。
さらに、AFR方式でレンダリングが行なわれているゲームの場合では、スケーリングの程度に応じて画面上の緑色の垂直の線が太くなったり、細くなったりします。
一方、SFR方式を用いている場合には、画面上の緑色の水平の線が上下に移動して、各GPUに描画負荷がどのように分散しているかが表示される。
なお、画面の上半分と下半分のグラフィックスの詳細度が同程度であれば、水平の線は中央付近に位置する。
【SLI Antialiasing 方式】:SLI利用のアンチ・エイリアシング(AA)
これは、2個のGPUカードで、アンチ・エイリアシング(※)の仕事を分割して、2倍までパフォーマンスを上げて、優れた画像品質を作るというものであり、上の描画方式とは全く別物です。
(※注:アンチ・エイリアシング:輪郭線のガクガクを滑らかにする処理のこと。)
1つ目のGPUカードは、(例えば)通常より右上にシフトしたエイリアシングのパターンを実行する。2つ目のGPUカードは、(1つ目と同数量で反対方向の)通常より左下にシフトしたエイリアシングのパターンを使用する。
この2つの結果を合成すると、ずっと画像品質が高くなる。この方式は、フレームレートは、むしろ下がる方向のため、ゲーム性能よりも、さらなるクリアな画質を求めるゲームに向いている。
NVIDIA 社は、ゲーム各社と共同して、SLIモードを自動的に最大化できる「プロファイル」を作り提供している。
【描画性能について】
★SLI(CFX)接続で、カード1枚の約2倍の性能言われ、対応ソフトウェアにおける平均的な処理速度上昇率は、およそ1.87倍(日本語ウィキペディア)とも言われますが、ゲーム系の3Dベンチマーク測定値などから見ると、通常は1.5倍前後くらいと想定した方が無難のように思われます。
これは、一般的にSLI技術による効果が最も顕著に現れるのは、高画質設定による高解像度を要するアプリケーションのためです。
(主な出典は、米国ウィキペディア:Scalable Link Interfaceからです。)
【SLI派生技術】
以下は、次々とSLI技術が進化し、派生した方式である。
【2GPUを搭載した(Dual-GPUの)シングルボード】
このカードは、発売当初は、マザーボードを限定などの多くの問題があったが、「GeForce 7900 GX2」 の頃から、Quad SLIを構成するためのカードとして、完成度を増して行った。
NVIDIA 社では、GeForce GTX 295 、GeForce GTX 590 、最新ではGeForce GTX 690 が発売されている。
(ATI 社では、 Radeon HD 6990、Radeon HD 7990 Dual GPU、ARES II (Radeon HD 7970 GHz Edition x 2)などの発売がある。)
←写真は、3-way SLI の例
【Quad SLI】
4-way SLI とも呼ばれる方式である。通常、2GPUを搭載した(Dual-GPUの)シングルボード2枚構成で、SLI接続する。
Quad SLIをサポートできる現在のGPUは、シングルGPUの名称で、GTX 285 (EVGA only) 、 GTX 480、 GTX 580、 GTX 680、および Titan と言われている。(出典:米国ウィキペディア:Scalable Link Interface)
また、マザーボードのチップセット(X58、X77、X79 など)などの制約もあります。これは、GPUカードすべてがフルレーン(PCI-Expressスロット×16動作)で接続される必要があるためです。(NVIDIA SLIコネクタの所有権とともに出荷されるのが、「SLI認証マザーボード」と呼ぶ。)
【描画性能について】
★Quad - SLI接続では、カード1枚の約3.4倍の性能と言われるが、ゲーム系の3Dベンチマーク測定値などから見ると、通常は、2倍超程度くらいと想定した方が無難のように思われます。
これは、一般的にSLI技術による効果が最も顕著に現れるのは、高画質設定による高解像度を要するアプリケーションのためです。
【3-Way SLI】
「トリプルSLI」とも呼ばれるこの方式は、Windows Vista で動作する、Nvidia 社のチップセット「 nForce 700 series」搭載のマザーボード向けから、 登場したようです。
また、 GTX 295、 GTX 590、 GTX 690 と GTX 460 以外のGeForce GTXカードで、動作すると言われています。対象から除外されたGTX 295、 GTX 590、 GTX 690 カードは、4-way SLI がサポートされています。
さらに、この3-Way SLIは、上に挙げた2 Way SLI、4 Way SLI 方式とは事情が異なり、使えるGPUカードに制約が多いようです。
【描画性能について】
★3Way - SLI接続では、カード1枚の約2.8倍の性能と言われるが、ゲーム系の3Dベンチマーク測定値などから見ると、通常は、1.9倍前後くらいと想定した方が無難のように思われます。
【Hybrid SLI】 (まだ制作中です。)
【 SLI技術を採用した高性能ゲームパソコンの最新例】
【最高スペックのQuad - SLI仕様ゲームPC販売ショップ例】
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2013年6月18日追記と修正